振り込め詐欺の原型
電話に出ると、「どなたですか?」「俺、俺」はオレオレ詐欺です。

このオレオレ詐欺の原型というか、まさにオリジナルは、20年ほど前にさかのぼります。

その日、僕はいつものように会社で、ねむ〜い午後の仕事と格闘していました。

ありがたいことに、その眠気を覚ましてくれたのは、一本の外線でした。

「じょぷりんさん、お電話です」

転送された電話は、当時交際していた女性からでした。

「仕事中、ごめんね。困ったことになった・・・」

彼女の声は、動揺していました。

「どうしたの?」

「実は、わたしの弟が・・・」

電話の向こうの彼女は既に涙声でした。

彼女には、弟さんがいるのですが、ちょっと前に、彼から電話があったというのです。

「どうも悪い人たちとトラブルになって、監禁されてクスリを飲まされてるらしいの・・・」

電話のいきさつは、次のようなものだったといいます。

「Rrrrrrr」

「はい、佐藤です。」

「あ・・・俺・・・」

「? 誰? 拓也なの?」

小さい頃から、弟さんと仲の良かったという彼女は、弟かと思って、そう呼びかけました。

「それで、拓也さん、どうしたの?」

「なんかクスリ? 麻薬を打たれたか何かで・・・。しゃべり方も声も変なのよ」

「・・・で、こちらはどうすればいいんだろう?」

「・・・また、電話するって言われたけど、それ以来、電話がないの・・・どうしたらいい?」

当時、僕は【オレオレ詐欺】なんて知りませんでした。

20年も昔の話しです。

世間でも騒がれていない時期でした。

「とにかく落ち着いて。会社もうすぐ終るから、会いに行くよ」

と言って、僕は電話を切りました。

(いったい、何が起ってるんだろう・・・)

考えがまとまらないまま、会社を出ると彼女と落ち合いました。

「どう? あれから、連絡あった?」

「ない・・・」

「そか・・・」

当時は、携帯電話をお互いに持っていませんでた。

おまけに拓也君は、一人暮らしだったから家に電話しても無駄だろうと思い込んでいました。

事態が急展開したのは、次の日でした。

朝っぱらから、彼女の電話で起こされました。

「? どうした! 拓也君から連絡あった?」

「実は、今朝の新聞で・・・」

彼女によると、変質者が逮捕されたという記事だといいます。

しかも、彼女の住まいの所轄警察署に逮捕されたそうです。

その手口が、電話で「俺、俺」と話し出し、知り合い・身内のフリをして、巧みに呼び出し、

性犯罪に及ぼうとした、というものでした。

僕たちの推測では、昨日の彼女への電話も、その変質者なのだろうと言う事になりました。

弟の拓也君を装ったまではいいが、他のカモに電話しているうちに、こちらの件を忘れたのでしょうか?

結局は、別の被害者のほうに電話し、言葉巧みに呼び出した挙げ句、性犯罪に及ぼうとして、逮捕となったわけです。

それならばと、拓也君の消息を訪ねて、まずは実家に連絡。

その日のうちに、実家経由で拓也君と連絡が取れました。

それ以後、模倣犯が増えました。

手口も巧妙化しました。

名前も【オレオレ詐欺】から【振り込め詐欺】になりました。

ニュースで【振り込め詐欺】が報道されるたびに、20年前のこの事件を思い出します。







JOPLIN
inserted by FC2 system