051:藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)
百人一首の51番目の作品は、藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)の作品です。

藤原実方朝臣は、生没年:???年〜999年です。

中古三十六歌仙の1人です。

朝臣(あそん)とは、以前にも出てきましたが「姓(かばね)」というものです。

苗字・名・姓の順に名乗っていたそうです。

藤原実方朝臣は、気性の激しい人だったようで、

御所で藤原行成(ふじわらのゆきなり)と喧嘩して、

藤原行成の冠を地面に投げ捨ててしまいました。

その罪で一条天皇の怒りにふれました。

そして、陸奥守(むつのかみ)に左遷(させん)され、任地で亡くなりました。

62番でご紹介する清少納言(せいしょうなごん)の恋人だったらしいです。







藤原実方朝臣が百人一首に残した作品は、、、

♪ かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを

です。

読みは、

♪ かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもいを

となります。

この歌は、最初見たときに「かくとだに」とか「えやは」とか

さっぱり訳がわからん、との印象でした(笑)

でも5句に「燃ゆる思ひを」とあるから、恋の歌かナァと漠然と思っていました。

まず、「かくとだに」の「かくと」ですが、

「このように(あなたを想っている)」となります。

「かくとだに」の「だに」は、「〜ということさえ」と言う意味です。

2句の「えやはいぶきの」ですが、

「えやは」は「〜出来ない」と言う意味です。

続く「いぶきの」は、「言う」と「伊吹山」の掛詞(かけことば)です。

♪ かくとだに えやはいぶきの

までが「このようにあなたを想っていることさえ、言うことが出来ない」となります。

「伊吹山」は、美濃国(現在の岐阜県)と近江国(現在の滋賀県)の国境にある山です。

3句の「さしもぐさ」ですが、これはお灸の原料になるのだそうで

伊吹山の名産品だそうです。

「伊吹のさしも草」が、序詞(じょことば)となって、

4句の「さしもしらじな」を引き出しています。

「さしもしらじな」は、「これほどとはご存知ないでしょうね」という意味です。

何をご存じないのかというと「燃ゆる思いを」です。

「私の燃ゆる恋の炎をご存じないでしょうね」となります。

また「さしも草」と「燃ゆる」は、縁語になっています。

ちょっと難解な歌のようにも感じますが、ストレートな愛の告白の歌ですね。







かくとだに  (このようにあなたを想っていることさえ)
えやは伊吹の (言うことが出来ません。伊吹山の)
さしも草   (さしも草。その「さしも」ではないけれど)
さしも知らじな(これほどとはご存知ないでしょうね)
燃ゆる思ひを (さしも草のようにジリジリと燃える私の思いを)







この歌は、清少納言に贈られたという説があります。

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