035:紀貫之(きのつらゆき)
百人一首の35番目の作品は、紀貫之(きのつらゆき)の作品です。

生没年は、866年または872年?〜945年?です。

歌人で三十六歌仙の一人です。

33番でご紹介した紀友則(きのとものり)の従兄弟です。

紀貫之は、930年〜934年に土佐の国の国司を勤めていて、

任期を終えて、今日の都に帰るときに日記文学「土佐日記」を書き残しています。




紀貫之が百人一首に残した作品は、、、

♪ 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける

です。

読みは、

♪ ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににおいける

となります。

この歌は、紀貫之が旅行をして、久しぶりに昔なじみの宿に泊まったら、

お店の人が「ご無沙汰でしたね」と、ちょっと怒っている様子だったので詠んだ歌です。

人はいさ  (あなたは、さてどうでしょう?)
心も知らず (他人の心はわかりませんね)
ふるさとは (この昔なじみの里では)
花ぞ昔の  (梅の花だけが、かつての)
香に匂ひける(香りを漂わせています)





宿の主が、紀貫之に「ご無沙汰でしたね」と、ちょっと怒っている様子なので、

♪ 人はいさ(あなたはどうなのですか?)

と問いかけて、半ば逆きれして、

「あなたこそ私のことを覚えていてくださいましたか?
 梅の花はかつての香りを漂わせていますよ」

と畳み掛けているようです。

紀貫之も宿の主も、お互いに心は変わってしまったかもしれないが、

梅の花だけはかつての香りを漂わせている、

という歌です。



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