012:僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
百人一首の12番目の作品は、僧正遍昭(そうじょうへんじょう)の作品です。

遍昭は、「遍照」とも表記されます。

生没年は、816年〜890年。

僧侶・歌人です。六歌仙および三十六歌仙の一人です。

9番で紹介した小野小町のボーイフレンドであったとも言われています。

第50代天皇・桓武天皇の孫に当たります。

出家前の名前は、良岑宗貞(よしみねのむねさだ)。

第54代天皇・仁明天皇(にんみょうてんのう)の

蔵人(秘書のような仕事)をしていましたが、

35歳のとき、仁明天皇が崩御し、

それを機に出家しました。

「僧正」というのは、僧侶が任命される役職のひとつです。





僧正遍昭が百人一首に残した作品は、、、

♪ 天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ

です。

読みは、

♪ あまつかぜ くものかよいじ ふきとぢよ おとめのすがた しばしとどめん

となります。

遍昭が仁明天皇に仕えていた頃に、

宮中で「五節の舞」というイベントがありました。

天皇の前で女性たちが踊りを披露するイベントです。

踊りを見た仁明天皇は、

・・・・・天女の舞のように美しい
     あの女性たちをいつまでも引きとどめておきたいものだ

とおっしゃったそうです。

仁明天皇の気持ちを察した遍昭が詠んだ歌が、

♪ 天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ

なのです。

意味は、

天つ風    (空を吹く風よ)
雲のかよひ路 (天女が帰っていくという、雲の中の通路を)
吹きとぢよ  (ふさいでください)
乙女の姿   (舞が終わって天に帰っていく乙女たちを)
しばしとどめむ(もうしばらく、ここに引き止めておきたいから)

となります。

雲の中には、天と地をつなぐ通路があって、

そこを天女たちが往来するという伝説があるそうです。

踊っている女性たちを見て、天女のように美しいと感じた仁明天皇は、

女性たちが、「雲のかよひ路」を通って天に帰ってしまうと

思ったのでしょうね。

よほど美しい踊りだったのでしょうね。

仁明天皇の気持ちを察した遍昭が、「天つ風(空を吹く風)」に頼んで

・・・・・天女が帰っていく「雲のかよひ路」をふさいでおくれ

と呼びかけているのです。

でも、直接天女たちを引き止めるのではなく、空の風によびかけるという

あたりが、ロマンティックですね。

僕だったら、帰ろうとする女性の手を引っ張って

「まだ帰らないでくれ」

と、直接言ってしまうでしょう(笑)



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