MIDI 音源
プロムナード(ピアノ) プロムナード(オルゴール) プロムナード〜古城(ピアノ) プロムナード〜キエフの大門(オルゴール他、色々な楽器) プロムナード 三〜チュイルリーの庭(色々な楽器) |
第一章 【展覧会の絵】との出会い 一 最初の一撃 僕が、ムソルグスキーの【展覧会の絵】を初めて聴いたのは、小学校五年生だったと思います。 それは、メガネのCMでした。 寂しげな診察室に、メガネ着用の女性(医師?)がいるCMでした。 BGMで流れていたのが、展覧会の絵であった。 流れていたのはピアノの原曲の【プロムナード】と呼ばれる第一曲目である。 おなじみのプロムナードのメロディがポロンポロンと流れる。メロディが持っている明るさとは裏腹に、僕の心には寂しげに響いてきた。問題は、三小節目の一拍目の和音です。 今にして思えば、僕はこの和音に取り付かれたのかも知れない。プロムナードの冒頭は、おなじみのメロディが二小節に渡って展開される。三、四小節目は一、二小節目の繰り返しのメロディに和音が重なってくるのです。 明るいメロディと思いきや、三小節目の一拍目は、なんとGmなのである。 当時、僕は、この 【明るいメロディを寂しげに演出してしまった三小節目の一拍目の和音】 に取り憑かれたのかもしれません。 以来三十年間、僕は【展覧会の絵】を聴いているのです。 二 ムソルグスキー モデスト・ペトロヴィチ・ムソルグスキーは、1839年ロシアのカレボ村というところに生まれました。 三 展覧会の絵 そんな彼が、三十五才の時に作曲したのが、【展覧会の絵】という組曲です。 ・・・・ 彼の親友だったハルトマンが突然この世を去りました。 ムソルグスキーは、突然のことにショックを受け、ベッドに倒れこんでそのまま、三日間目覚めなかったそうです。 ・・・・ ハルトマンの死から一年後、親友のスターソフの尽力によって開かれたハルトマンの遺作展覧会。 その展覧会に訪れたムソルグスキーが、展覧会の印象を元に作曲したのが【展覧会の絵】という組曲なのです。 ・・・・ ムソルグスキーは、わずか三週間でこの【展覧会の絵】を書き上げたのだそうです。【驚異的な速さで書き上げた】と、往々にして評されるが、果たしてそうでしょうか? ハルトマンの悲報に接し、またハルトマンの遺作展に接したムソルグスキーは、色々な思いで、ピアノに向かったことでしょう。ハルトマンへの思いが、滝のようにあふれ出てきたのではないえしょうか? 四 いろいろな演奏家たち ムソルグスキーの存命中も死後も、実はこの【展覧会の絵】はあまり評価されなかったそうです。 ムソルグスキーの死後四十年ほど経った1923年五月三日、フランスの作曲家モーリス・ラベルが、ムソルグスキーの【展覧会の絵】を編曲して発表しました。皮肉なことにラベルの編曲はとても良い評価を受けました。以来七十年以上にわたり長く愛されています。 【展覧会の絵】が最初に有名になったのがこのラベルの編曲版だったことが、影響しているのでしょうか? それとも、ムソルグスキーとハルトマンの逸話が多くの音楽家たちの感動を呼び起こすのでしょうか? それとも、【展覧会の絵】それぞれの絵画に基づいた曲の集まりだということが、音楽家たちの創作意欲を掻き立てるのでしょうか? ムソルグスキーの【展覧会の絵】は、多くの著名な音楽家たちによっていろいろな演奏が発表されました。 ラベルなど、オーケストラの編曲をはじめ、EL&P(エマーソン・レイク・パーマー)や富田勲の編曲は、聴いたことがあり人も多いのではないでしょうか? それ以外にも、全編クラシックギターによる演奏、チェロ&アコーディオンのデュオなどもあります。 筆者は小学校五年生の時に、初めてピアノの原曲、それも冒頭の数小節を聴いただけで、実はその後三年間ほど、展覧会の絵を聴けずにいました。 当時は、我が家にラジオやテープレコーダーがなく、レコードプレイヤーはあったものの、小学生のおこづかいでは、二千円以上するLP版のレコードは買えなかったからです。 いわゆるラジカセを買ってもらったのは中学生のころでした。FMで【展覧会の絵】を放送したのを録音しました。それはラベル編曲のものです。ピアノ原曲を聴くようになったのは、さらに十五年後くらいでした。CDプレイヤーを買って、ピアノ版のCDも買いました。それは、【ウラディミール・アシュケナージ】の演奏によるピアノ演奏で、筆者とピアノ原曲との再会でした。 五 リムスキー=コルサコフ ムソルグスキーは、有名な【ロシア五人組】の一人です。 ・・・・ その中の一人、リムスキー=コルサコフは、天才ムソルグスキーの荒々しさとは異なり、音楽理論にのっとったキレイな音楽を作った人のようです。 ムソルグスキーが書き残した楽譜をキレイにまとめて、出版に大きく貢献したのはリムスキー=コルサコフだそうです。ところが、彼はムソルグスキーの天才的なところが感覚的に合わなかったようです。 − ここの和声は、幼稚だ − ここの転調は突飛過ぎる などなど不満を感じていたようです。 せっかく、ムソルグスキーの作品の整理をしているのに、だんだんと腹が立ってきた、ともいっています。 ・・・・・ 彼は、自分流にムソルグスキーの音楽を変えていきました。決定的なのは、歌劇【ボリス・ゴドゥノフ】でした。 ムソルグスキーの存命中も、人気の高かったボリスですが、リムスキー=コルサコフ編曲のボリスは、往年のムソルグスキーファンにには、不評でした。 − ムソルグスキーらしさが消えてしまった それで、リムスキー=コルサコフは、ムソルグスキーへの理解を深めたようです。 六 このページを書くにいたった経緯 世の中の解説や評論の多くは、プロ・アマ問わず、音楽に携わっている人たちのようでした。つまり、演奏が出来る・譜面が読める・クラシックとのかかわりが深い、といったところです。それはそれで、大変結構なことですが、筆者のようなドシロウトが【聴く専門】の立場から書かれた文献は、非常に少ないのは残念なことです。例えば、演奏が出来る人は、実際に演奏することで、ムソルグスキーの考えが理解出来ることも多いでしょう。しかし、【演奏が出来る】ということが、却って固定観念というかありきたりの理解を引き出す、ということもあるかも知れません。直前にも書いたように、ムソルグスキーの時代に、ムソルグスキーの魅力を最も感じていたのは、一番身近な音楽家であったリムスキー=コルサコフではなく、一般聴衆だったのです。実際、一部の解説には、 【伝統的なクラシックの和声を学んで来た人にとっては、違和感を感じるだろう】などと書かれています。僕は、【学んだ事のない人】ですから、【違和感を感じる】以前に、ムソルグスキーがすーっと心に入って来た人間だと思います。 【音楽評論】。 当然、演奏経験も豊富で専門知識も豊富な人が、多くを語れる事でしょう。しかし、ドシロウトだからこそ語れることもきっとあると思うのです。 また、インターネットで多くの文献に触れると、ピアノの演奏や管弦楽、せいぜい吹奏楽に触れているところまでであって、もっと違う演奏(後述する、ギター演奏、アコーディオン演奏など)に触れているものはまだまだ少ないと言えます。このことは、音楽に精通したひとばかりが、評論・解説を書いているということを端的に表わしているのではないでしょうか? ピアノや管弦楽といった従来の枠に囚われず、色々な編曲色々な演奏を聴いて書き進めるつもりです。 第二章 全編の身勝手な解説 ここでは、原曲の身勝手な解説と鑑賞文を書きます。尚、筆者は音楽については、ほとんどシロートです。楽器は色々と触ったことはあり譜面も少しは読めます。和音のことも多少知っていますが、所詮シロートの知識です。 展覧会に出展された絵の詳しい説明は、追跡ムソルグスキー「展覧会の絵」 団伊玖磨・NHK取材班著をお読みくださるといいと思います。 便宜的にプロムナードは番号を付してあります。 一 プロムナード一(Promenade) 冒頭のプロムナードについては、先にも少し触れた。 僕は、三小節目の一拍目の和音(Gm)にとてもビックリして惹かれている。 1、 二小節目に演奏されるメロディは、このプロムナードに合計四回現れる。 一回目 : 旋律のみが淡々と演奏される。明るいメロディなのに、どこか寂しげに感じる。 二回目 : 一拍目の和音(Gm)がどぎもを抜く効果。一回目の感情をぐっと引き寄せてよりいっそう寂しさを感じさせる。だが四小節目にかけて、明るい和音が多用され、四小節目の最後の音はFとなり、明るい展開を予想させる。 三回目 : エンディングに向けて、ファンファーレのような響きを持つ明るい展開。ベース・ラン(左手のメロディ)も特徴的で気持ちが良い。 四回目 : 直前の三回目を受けていよいよエンディングの雰囲気を出している。これもベース・ラン(左手のメロディ)も特徴的で気持ちが良い。 さて、プロムナードは、ピアノ原曲には六回(実質的には七回)現れる曲である。 それぞれに色々な表情を持っている。 ・プロムナード一 : 寂しげな始まりではあるが、意気揚揚としたムソルグスキーの心情を表現している。あとに続く【こびと】とのつながりも考えると、ムソルグスキーとハルトマンが、共にロシアの新しい芸術について語り合い、希望に燃えている様子を表わしているとも感じられます。 ・プロムナード二 : 牧歌的な雰囲気で演奏される。 ・プロムナード三 : プロムナードのメロディに乗せて奇をてらったようなメロディが重なるのが印象的。 ・プロムナード四 : 直前の曲【ビドロ】を受けてか、短調で演奏される。 ・プロムナード五 : ラベル編曲【展覧会の絵】では、省かれてしまったプロムナード。この五番目のプロムナードで、聴き手が冒頭の心情に引き戻されるのがムソルグスキーの狙いだったのか? ・プロムナード六 : カタコンブに続いて演奏される、【死者の言葉を持って死者とともに】は、短調のプロムナードとも言える曲である。 ・プロムナード7 : これは曲目としては表れていない。最後の曲【キエフの大門】の最後のほうでプロムナードの旋律が流れるというものです。ここに至って、ムソルグスキーのすべての想いが集められた印象を受ける。 これらのプロムナードが、十曲のピアノ曲の間に織り込まれて楽曲全体を味わい深い物にしています。このプロムナード、多くの解説では、 【展覧会会場で、作品と作品の間を歩くムソルグスキーの心情を表している】 となっていますが、果たしてそうでしょうか? プロムナード一は、【意気揚々】と言う感じです。まさに、ハルトマンとの楽しい思い出やロシアの芸術を二人で熱く語り合った様子が感じ取れます。プロムナード一は、【展覧会の絵】の冒頭の曲です。ムソルグスキーは、意気揚々とした気持で、展覧会場に足を踏み入れたのでしょうか? 二 こびと(Gnomus) プロムナードが終わると、その余韻に浸るひまもなく、ガツーーン! と奈落の底に突き落とされるような音が鳴り響きます。アシュケナージのピアノ版の演奏では特にプロムナードとこびとが隙間なく演奏されています。 最初、アシュケナージのピアノ版を聴いたとき、【もっと間を空けて演奏して欲しい】という印象を受けたものでした。この冒頭のガツーン! は、ハルトマンの突然の悲報を聞いたショックを表現しているのだと思います。プロムナード一が、ムソルグスキーとハルトマンが、共にロシアの新しい芸術について語り合い、希望に燃えている様子を表わしているならば、こびとのガツーン! は、希望が無残にも打ち砕かれた様子を表現しているのでしょう。ハルトマンの突然の死を知らされたとき、ムソルグスキーは、そのままベッドに倒れこんで三日間眠ったままだったそうです。そういうムソルグスキーの驚きと落胆をよく表現した曲と言えます。 このこびと(Gnomus)というのは、ロシアの民話に出てくる妖怪なのだそうです。展覧会に飾られた絵を見ると、茶目っ気もありどこか恐ろしげな不思議な生き物という感じです。 三 プロムナード二 牧歌的な雰囲気で演奏されるプロムナードです。 田舎の朝の雰囲気もかもし出し、朝もやの中、遠くに古城が見えるという情景をうまく描いて続く【古城(Il vecchino catselllo)】へとうまく繋げています。 四 古城(Il vecchino catselllo) イタリアの古城の前で吟遊詩人が歌う絵をモチーフとしているそうです。直前のプロムナード二で、雰囲気を作っておいて古城へとつないでいます。 ラベルは、吟遊詩人をサックスで表現しています。演奏者にもよりますが、のどでビブラートをかけることができるため、この吟遊詩人をサックスで演奏させるのは、うってつけであると思います。 ベースラインは、低いG#の音が、ターンタターンタ(譜面入れる)と延々と続きます。 これも大きな特徴ですね。 タイトルもイタリア語の表記になっています。 五 プロムナード三 プロムナードのメロディに乗せて奇をてらったようなメロディが重なるのが印象的。 六 チュイルリーの庭(Tuileries: Dispute d'enfants apres jeux) 七 ブイドロ(Bydlo) ブイドロは【牛車】という意味らしいですが、ムソルグスキーの残された文章によると ― 【牛車】ということにしておこう なのだそうです。 とすれば、ムソルグスキーは何を意味してこの【ブイドロ】を書いたのか? 八 プロムナード四 直前の曲【ビドロ】を受けてか、短調で演奏されます。 九 卵のからをつけたひなの踊り(Ballet des poussins dans leurs coques) タイトルはフランス語になっています。 余談ですが、、ロシア帝国の軍人であったムソルグスキーは、フランス語に堪能であったといわれています。 当時の宮廷・政府での公用語はフランス語だったといわれています。 この曲は、バレエの衣装のデッサンがもとになっています。 十 サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレ(Samuel Goldenberg und Schmuyle) 金持ちと貧乏人の二人のユダヤ人を描いた絵をモチーフとしています。もともとは、サミュエルの絵とシュミュイレの絵との二枚の絵をムソルグスキーが、一つの曲にまとめたものらしいです。 冒頭から低音のメロディが重々しく流れます。これがサミュエル・ゴールデンベルグ、金持ちの年老いたユダヤ人です。途中から、悲しそうな高音域のメロディに取って代わります。これがシュミュイレ、貧乏人のユダヤ人です。後半は、サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレの対話とも取れる展開になります。すなわち冒頭の低音のメロディに中間の高音のメロディを重ねてしょーもない二人の議論をイライラと表現しています。 楽譜の誤り? かなり以前から疑問に思っていたことだが、 終わりから二つ目の音が恐らく、誤って伝わっている。 音名でいうと、最後の四つの音は「シドララ」なのか「シドシラ」なのか? 譜面はどちらを採用しているか? 「シドララ」(正しいと思われる) アシュケナージ(ピアノ・オーケストラともに) 長谷川陽子、ミカ・ヴァェユリュネン編曲(アコーディオン&チェロ) 「シドシラ」 山下和仁 ラベル(要確認) 十一 プロムナード五 ラベル編曲【展覧会の絵】その他の演奏では、見事に省かれてしまったプロムナード。 十年くらい、ラベル編曲ばかりを聴きつづけた筆者は、初めてこのプロムナード五を聴いたとき、【ふ〜ん】という感じでなじめなかったです。プロムナード一とプロムナード五は、調も同じで、だいたい内容も同じです。なんとなく、展覧会会場を一周して、入り口の受付にでも戻った感じも受けます。 この五番目のプロムナードで、聴き手が冒頭の心情に引き戻されるのがムソルグスキーの狙いだったのでしょうか? 前半の六つの絵が終わり、後半の五つの絵に向けて何か思いを新たにするものがあったのでしょうか? ラベルはこのプロムナード五を単に冗長と感じて省いてしまったのでしょうか? 十二 リモージュの市場(Limoges-Le marche) パリのリモージュでのスケッチ十四枚をもとに書かれた曲です。 十三 カタコンブ(Catacombae:Sepulchrum Romanum) 曲のほとんどが、全音符による和音を叩くだけ、という変わったスタイルの曲。 ・・・・・・ ラストは、徐々に不協和音で不安感を盛り上げています。最後の和音は、なんとも形容しがたい響きを持っています。最後の難解な不協和音に込められたムソルグスキーの思いはどんなものだったのでしょう? 親友ハルトマンの突然の死は、それほど彼にとって受け入れがたいものだったのでしょうか? 十四 死せる言葉による死者への呼びかけ(Cum mortuis in lingua mortua) ホロホロ・・・・と悲しげな雰囲気が作られる中、短調のプロムナードが流れます。 十五 バーバ・ヤーガの小屋(La cabane sur des pattes de poule) それまでの雰囲気が一転して、【さぁ、エンディングに向けてひと騒ぎするぞ!】といった感じの始まりです。 十六 キエフの大門(La grande porte de Kiev) 【キエフの大門】とは、ハルトマンがコンテストに応募した作品のようです。当時、キエフの大門を再建する計画があったそうで、そのデザインが公募されました。ハルトマンは意欲的に創作に取り組み、自信を持って応募しましたが、なぜかコンテストそのものが中止になってしまいました。 もしかすると、ムソルグスキーとハルトマンの二人の間では、自信作【キエフの大門】が日の目を見なかったことを残念がる会話があったのでしょう。 「君は新しいロシアの音楽、僕はロシアの新しい美術・建築を創造するんだよ」 そう語り合っていた二人にとって、【キエフの大門】は夢の象徴だったのかもしれません。ハルトマンの遺作展覧会で、この【キエフの大門】を見つけたムソルグスキーは、何を感じたのでしょうか? (君の無念、僕が晴らしてあげよう) (君の果たせなかった夢を楽曲に込めて) (君を天国に送る歌を歌おう) この【キエフの大門】という曲は、そんなムソルグスキーの思いが余すところなく表現されています。 冒頭の数小節は、教会の屋根の上にある鐘を鳴らして、途中には賛美歌のような静かな荘厳なフレーズが現れます。賛美歌を思わせる部分は二ヶ所ありますが、その間に【キエフの大門】の主題メロディが挿入されています。 ここの演奏は、面白いです。ピアノの演奏で解説しますと、まず左手のユニゾンで、【キエフの大門】の主題を演奏します。右手は、やはりユニゾンで、あがったり下がったりと美しいスケールを八分音符の連続で演奏しています。これだけでもとても美しい演奏になっているのですが、右手と左手の音が同じ位の高さになったところで、右手左手の役割がフワッと交代します。今度は、左手が八分音符のスケール、右手が主題です。この交代によって、この主題の部分がグググッと感動的なものになっています。 そして後半になると、静かな盛り上がりとともに、凱旋ムードのプロムナード。 ここで、今までの六つのプロムナードとそれらがつないだ個々の絵に込められた思いが一挙によみがえります。そして続く上昇する和音の連続が、何か【魂の救済】のような安堵感を与えます。 さて、最後にもう一度主題が登場して【キエフの大門】は華々しく荘厳に終わります。 でも、その前にも感動的な一場面があります。 三連符が数小節つづいて、【もうお別れだよ、急いで、急いで】という気持ちにさせます。ここは、ハルトマンを棺に納める前の最後の対面もしくは火葬にする前の最後の対面のような心情を表わしているのだと思います。ありったけの思いをこめて親友ハルトマンを見送ったのでしょうね。 終わりの数小節手前で、なんともトリッキーな和音が二つ現われます。ここは、おそらく誰もがオヤッ? と思うのではないでしょうか? (リムスキー=コルサコフだったら、嫌がるのでしょうかね?)その少しあとに同じように和音が二つ現れますが、今度は主題へと導くまっとうな音になっています。そこへと導くためのアクセントになっているようですね。なんとなく感じることですが、ラベル編曲では、この部分を消化しきってない印象を受けました。 終わりから四小節目に【胸キュン和音】が現れます。 最後は、ハルトマン追悼の鐘を高らかに鳴り響かせて【キエフの大門】は終わりとなります。 第三章 いろいろな演奏 序章でも紹介した、さまざまな音楽家の演奏を聴いた感想・聴くときのポイントなどをご紹介します。 一 ラベル編曲(オーケストラ) おそらく、最もよく知られているのがこのラベル編曲ではないでしょうか? オーケストラの楽曲としても人気の高い曲です。 筆者自身、初めてピアノ原曲の最初の数小節を聴いたっきりで、それ以降十年くらいは、このラベル編曲を聴きまくっていたほどです。 ムソルグスキーが1881年に死んだあと、五年もたってスターソフによって展覧会の絵の楽譜が出版されました。その後、識者のセルゲイ・クーセヴィッキィがモーリスラベルに編曲を依頼しました。初演は1923年五月三日。それ以後、ムソルグスキーの名作は世に広まり人気が高まりました。 ラベルの編曲はほんとに完成度が高く、こまごまと文句をつける余地はないほどなのですが、ひとつ残念なことがあります。リモージュの市場の直前のプロムナードをなぜかラベルは、カットしてしまいました。これはなぜなのでしょう? その理由を述べたラベルの言葉は、文献には見当たらないようです。ここのプロムナードは解説編でプロムナード五としました。プロムナード五は、おおむねプロムナード一と同じです。キーも同じ、長さ構成も似ています。プロムナード一の出だしが単音で演奏されるのに対し、プロムナード五は、両手ともにユニゾン、つまり単音のプロムナードを四オクターブにわたって演奏しています。 思うに、このプロムナード五は、作曲者ムソルグスキーにとって、後半の展開の前の小休止、そして後半に向けてもう一度冒頭のプロムナードを演奏することによって、意気揚揚とした感じを思い起こさせる意味があったように思います。 ズービン・メータ指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック CBSソニー、 録音:1979年1月27日 Avery Fisber Hall。 解説:宇野 功芳 これは、かなり感動的な演奏だと感じました。 解説者の宇野 功芳氏も絶賛しています。 宇野氏は解説の中で、サミュエルゴールデンベルグとシュミュイレについて、 「シュミュイレがサミュエルに借金を頼み込んでいる様子」 と記述していますが、筆者はそうは感じませんでした。もともとは、サミュエルの絵とシュミュイレの絵との二枚の絵を、ムソルグスキーが1つの曲にまとめたものらしいから、「借金を頼み込む」までのストーリーがあるのでしょうか? とはいえ、借金だと思いながら聴くと、本当に借金を頼んで断られているように聴こえてくるから面白いものです。 二 アンサンブル・リンデンバウム 友人に誘われたアマチュアコンサートで、偶然聴いた演奏です。 小学校の体育館で行われたコンサート。五つの楽団が演奏し、時間の関係もあって、アンサンブル・リンデンバウムが演奏したのは、全編のほぼ半分くらいだったと思います。 ・・・・ それでも、彼らの演奏は感動的なものでした。 特に印象的だったのは【サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレ】です。 いわゆるシュミュイレの語りの部分をフルートが演奏しています。 不覚にも(?)僕はここで泣いてしまいました。 ライブだったせいもありますが、貧乏人であるシュミュイレが悲しそうに何かを語っているようで、感動的でした。 三 カルロ・バッラリーニ編曲(木管五重奏) − ビビエーナ五重奏団 アンサンブル・リンデンバウムがCDでも発売していないかなぁ、などと思いをめぐらせているところにふと現れたのが、この【カルロ・バッラリーニ編曲(木管五重奏) − ビビエーナ五重奏団】です。 全体にとてもよかったです。 残念なのは、プロムナード五。せっかくオリジナルの譜面どおりにプロムナード五を演奏しているのに、極端な編曲をしていることです。 そのため、リモージュの市場にうまくつながらない印象を与えてしまっています。 また、木管楽器ばかりの編成だとどうしても【牧歌的】という雰囲気になりがちです。 キエフの大門は編曲にもう一ひねりして欲しいところですね。 それでも全体的にはとても良い演奏だと思いました。 【サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレ】で、シュミュイレの語りの部分をフルートが演奏しているのも予想通り良かったです。 リモージュの市場やバーバ・ヤーガの小屋などのテクニカルな曲も見事に演奏されています。 四 富田勲(シンセサイザー) つまらなかった。というか気持ち悪かったです。 まだまだ、「シンセサイザーで遊ぶ、試す」という感じで完成度は低いと感じました。 テルミンのような音が多用されており、「キエフの大門」にまで登場したのには閉口しました。 部分的には、面白いところもありましたが、全体的に遊びすぎなので死んでいる感じです。 五 EL&P(ロックバンド) (プロムナード・バーバヤーガの小屋・キエフの大門 ドラムが非常に良い。原曲の持ち味を失わず・見事に引き出していると思う。 他の曲(グノーム、古城、ビドロなど)もぜひ聴いてみたい。) 六 展覧会のエッ!? この演奏は、展覧会の絵とほかのクラシックの名曲をコラージュして笑いを取る、というものです。思わず、「エッ?」と口に出てしまうので、こういうタイトルになったのでしょう(笑) 演奏内容は、 ・ 展覧会の絵より、プロムナードと他の曲 ・ プロムナードの変曲(おかしく変えてしまう) ・ クラシックの名曲と歌謡曲のコラージュ ・ その他編曲 といった具合です。 アイネクライネナハトムジークが植木等のスーダラ節に変わってしまったりして、思わず笑ってしまったのですが、やはり「ウケねらい」という感は否めません。 頭を抱えてしまったのですが、純然たるメロディで笑いを取るのは難しいなぁと思いました。 歌詞が笑えてしまう、異なる二つの曲をくっつけて笑いを取る、わざと間違えて見せて笑いを取る、というのではなく、「純然たるオリジナルのメロディで笑いを取る」ことは難しいのではないか? そもそも笑いとはなんだ? ちぐはぐだたり、予定と違って頓珍漢な方向に行ってしまったり、不真面目だったりするから笑える? 「世にもあっけないプロムナード」のように、唐突にエンディングに持ってかれて「オイ、何だよ」とつい笑ってしまったり、「調律のプロムナード」のように、チューニングが狂ったピアノで平気で弾いている、ということが笑いを取るのでしょう。 ところで、演奏者のピアニスタHIROSHIは、すごい演奏を聞かせてくれます。右手と左手がまったく違う曲を弾いているのです。リズムもジャンルも異なる二つの曲をこうも見事に融合させてしまうのは、スゴイ技術ですね。 【展覧会のエッ?】というタイトルとは裏腹に、筆者が一番感動したのは、「ボヘミアン・ラプソディ」という曲でした。この曲はロックバンドQUEENのものをピアノ独奏に編曲したものです。 実は筆者は、QUEENも大好きなのですが、HIROSHIの編曲も素敵だと感じました。 全体に展覧会の絵風になっているんですね。もう少し細かく言うと「キエフの大門」っぽくなっています。 また、期待はずれだったのは、展覧会の絵からのコラージュがプロムナードのみだったことです。 またの機会に、プロムナード以外の変曲・コラージュを聞かせて欲しいなぁと思います。 「バーバヤーガの小屋」が「禿山の一夜」に変わってしまうのも面白そうです。 (同じムソルグスキーの曲ですが) 最後に面白かった曲のタイトルと一行解説をつけて起きます。 アイネクライネ"スーダラ"ムジーク アイネクライネナハトムジーク(モーツァルト)+スーダラ節(植木等)ほか2曲をコラージュ。 お見事です♪ ゲゲゲのカンパネラ ラ・カンパネラ(リスト)+ゲゲゲの鬼太郎。あの有名な曲が始まるのかと思いきや、一転して妖怪が・・・ ラ・カンパネラとゲゲゲの鬼太郎は、あまりにもミスマッチでお見事というほかはありません。 六/八拍子のラ・カンパネラに、四拍子のゲゲゲの鬼太郎をキレイにのせちゃってるんだから、うなってしまいます。 英雄プロムナード 英雄ポロネーズ(ショパン)+プロムナード。これのすばらしいところは、もとの英雄ポロネーズを壊していないところだと思います。ショパンを改めて聴きなおしてしまったほどの傑作コラージュ! それに続けて・・・・【組曲 珠玉のビートずるっ!】 昨日ポロネーズ 軍隊ポロネーズ(ショパン)+イエスタディ(ビートルズ)これも、もとの軍隊ポロネーズを壊さずにうまくイエスタディを乗せています。 月光ミッシェル 月光ソナタ(ベートーベン)+ミッシェル(ビートルズ)。これは、もうこのままオリジナル作品として出してもいいくらいの名曲です。月光もミッシェルも雰囲気の似た曲なので、ベストマッチだと思います。 乙女のプロムナード 乙女の祈り(バダジェフスカ)+プロムナード。これは、実に笑えます。(面白さを譜面で説明したいほどです) 乙女のオブラダ 乙女の祈り(バダジェフスカ)+オブラディ・オブラダ(ビートルズ)引き続き、この曲も笑えます。とめの祈りの譜割りとオブラディオブラダの譜割りをうまく合わせています。 軍隊ビートずるっ! 軍隊行進曲(シューベルト)+レット・イット・ビー/ヘイジュード/イエローサブマリン/シー・ラブズ・ユー(ビートルズ) おなじみの軍隊行進曲と最初の六小節がまったく同じ。で、そのあとおなじみの軍隊行進曲かと期待したら、いきなりレット・イット・ビー。しかも、左手が軍隊行進曲を続けているのだ。合間合間に、完全な形で軍隊行進曲が流れて、ヘイジュード/イエローサブマリン/シー・ラブズ・ユーも演奏される。 ヴィヴァルディのプロムナード 四季より春(ヴィヴァルディ)+プロムナード。これも笑えます! 違いのわかるプロムナード ネスカフェ・ゴールドブレンドのテーマ(八木正生)+プロムナード。おなじみのネスカフェのメロディのあとに短調のプロムナードが流れます。 プロムナード協奏曲第一番(チャイコルグスキー作曲) ピアノ協奏曲第一番(チャイコフスキー)+プロムナード。チャイコフスキー、ムソルグスキー、ともに十九世紀ロシアの偉大な作曲家。二人合わせてチャイコルグスキーというわけですね。 この曲をもって展覧会のエッ!? は閉幕となります。 七 長谷川陽子、ミカ・ヴァェユリュネン編曲(アコーディオン&チェロ) この演奏は、エキサイティングでした。 ひとつひとつの曲が始まる直前には、必ず「出だしは、主題はどちらが演奏するのかな?」とわくわくしてしまうのです。また、チェロとアコーディオンは音色のまったく異なる楽器のようでいて、意外にもよくマッチしたサウンドを聴かせてくれます。チェロ、アコーディオン共に、ピアノのようなアタックの強さはなく、ピアノのような減衰音ではありません。もともとのピアノ原曲の味わいがかなり消されてしまうのかな、と思い、ハラハラして聴きました。 プロムナード一 いきなり期待を裏切られました。 チェロの出だしで、厳かに出るのかな、なんて期待していたのですが、なんと! アコーディオンで始まります。 こびと プロムナード 二 古城 プロムナード 三 チュイルリーの庭 ブイドロ プロムナード 四 卵のからをつけたひなの踊り サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレ この曲は、サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレの対話、という曲なわけですが、うまく、二つの楽器の対話という感じが出ていて面白かったです。 プロムナード 五 リモージュの市場 チェロとアコーディオンの2つだけとは思えないような迫力とスピード感のある演奏になっています。 カタコンブ 死せる言葉による死者への呼びかけ バーバ・ヤーガの小屋 キエフの大門 八 山下和仁編曲・演奏(ギター) 全編クラシックギター一台による独奏です。 彼の編曲でうれしいのは、全曲のキーを半音下げてはいるものの、ちぐはぐなキーに移調しなかったことです。専門家のコメントによると、弾きにくい個所もかなりあって、曲ごとに弾きやすいキーに移調するのも可能らしいのですが、曲ごとにバラバラに移調してしまっては、原曲の味わいが損なわれてしまうのは必至です。 クラシックギターによる演奏なので、ピアノ原曲とは、それ相応に雰囲気が変わります。全体的には、ギターであるが故の迫力の乏しい部分をテクニカルな奏法で補うことで、独特の迫力をかもし出していると感じました。 ブイドロ あの物悲しい感じと重々しい感じをよくぞここまで表現した、と感動する演奏になっています。 ブイドロの主題は前半と後半の二回演奏されますが、ピアノの原曲では、後半が一オクターブ上を加えたユニゾンになっています。山下氏は、ここを前半より一オクターブ高いメロディをトレモロで弾いています。トレモロをしながら、低音のリズムを刻んでいます。演奏の技法としては、【アルハンブラ宮殿の思い出】に近いかもしれません。この部分、なんど聴いても【おおー!】と感じます。 サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレ これは、ちょっと笑ってしまいます。妖怪が出てきそうな雰囲気です。 リモージュの市場 これは、楽しいです。リモージュの市場というよりは、地中海のどこかの港という感じです。 バーバ・ヤーガの小屋 かなりテクニカルな編曲です。彼自身が卓越したプレイヤーであることもよくわかる演奏です。原曲のフレーズを二音ずつ弾いて躍動感・荒々しさを表現しています。 キエフの大門 全弦をダランと鳴らす奏法を多用して、原曲の盛り上がりを再現しています。途中、プロムナードが現れるのですが、ここをハーモニックスあるいはピッキングハーモニックスを多様した演奏にしています。実は、この部分、筆者が大学のときに先輩が教えてくれたものでした。時期的に見て、その先輩は山下氏の演奏を聴いたのだと思います。 九 ウラディミール・アシュケナージ指揮・フィルハーモニー管弦楽団 オーケストラの編曲としては、ラベルの編曲と肩を並べる作品だと思います。 こびと ラストの部分でラベル編曲は、スネアドラムを十六分音符で鳴らしていますが、アシュケナージ編曲は、いわゆるロール打ち(ザーッと鳴らす奏法)です。筆者は、アシュケナージ編曲のほうを結構気に入ってます。 バーバ・ヤーガの小屋 この曲のラストもスネアドラムのロール打ちが印象的です。ラベル編曲には見られない迫力です。 ・・・・ ラストでキエフの大門に続くところでは、ロール打ちを「ザー! ザー! ザー!」と三回に分けて 盛り上げています。 「ザぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」という具合に徐々に盛り上げるより効果的です。 「これでもか! これでもか!! これでもか!!!」と何かを訴えているようです。 十 ウラディミール・アシュケナージ(ピアノ) 筆者が一番気にいっているのが、このウラディミール・アシュケナージが演奏するピアノ原曲です。聴いていると、【鐘を鳴らしている】という感じがしてきます。特にキエフの大門では、和音の響きを残したまま、次の和音をガーンと打ち鳴らしています。 親友ハルトマンを追悼する鐘。 ハルトマンが果たせなかった夢を、ハルトマンと二人で語り合った夢を、鐘の音に込めて位置鳴らしています。ムソルグスキーは、芸術作品としてではなく、ただただ親友ハルトマンへの思いだけで、この【展覧会の絵】を作曲したに違いありません。 ブイドロ 他の編曲・演奏ではなかなか聴けないのですが、この曲は譜面どおり、フォルテシモで始まっています。よく言われるような【牛車が遠くから近づいてくるような】表現方法になっていません。 筆者は、このガンガンと力強く演奏されるブイドロを大変気に入っています。 第四章 展覧会の絵と僕の生活 一 癒しアイテム 嘆き・悲しみ・喜び・意気揚揚・希望・不安・沈黙・回想・別れ・・・もろもろの感情が随所に表現されていて、一通り聴くとそれらの感情が自分の中で共振して、ラストのキエフの大門で、全部癒してくれる、そんな感じがします。会社で嫌なことがあって落ち込んで帰ってきた日の夜、全編三十分のこの楽曲を最初から最後まで通して聴くと、不思議と心が癒されているのを何度も感じました。 このページを書くにあたっては、色々な資料に目を通し、さまざまな演奏を聞きました。それらの作業を進めるうちに、なぜ筆者が【展覧会の絵】に三十年も釘付けになっているのかがわかりかけています。 二 人それぞれの【展覧会の絵】 【展覧会の絵】ひとつひとつの絵と楽曲の身勝手な説明、さまざまな編曲の紹介と感想を述べさせていただきました。筆者の展覧会もそろそろ閉会です。 ムソルグスキーの【展覧会の絵】。 まだまだベートーベンやモーツァルトといった作曲家ほどには知られていないかもしれません。数多くの編曲が発表されていることもまだまだ知られていないでしょう。 ムソルグスキーとハルトマン。 ハルトマンとムソルグスキー。 二人の友情物語に心惹かれて、筆者はこのページを書きました。 ムソルグスキーの【展覧会の絵】。 なぜ、この組曲は多くの人の心を動かすのでしょうか? なぜ、数多くの編曲や演奏スタイルが発表されるのでしょうか? 展覧会の会場を散策する人々の胸のうちはさまざま。ひとつひとつの絵を鑑賞しての印象もさまざま。それを語り伝える表現方法も表現力もさまざまです。 ヴァイオリンで表現する人もいればトランペットで表現する人ともいます。ムソルグスキーは、ピアノで表現しました。ハルトマンへの思いを込めて。筆者は、楽器を演奏することができませんので、文字で表現しました。 詩で表現する人、新たな文学で表現する人、ハーモニカやリコーダーのような素朴な楽器で表現する人、手芸で一枚一枚の絵を再現する人、たくさんの表現する人たちがこれからも現れることでしょう。 自由に感じることの嬉しさ、自由に表現することの楽しさ・素晴らしさ、それらの無限の可能性を示したくれた情感豊かな贈り物、それがムソルグスキーの【展覧会の絵】なのです。 存命中は華々しい評価が得られず、失意のうちにアルコールにおぼれ、病気になって四十二歳の若さで寂しく死んでいったムソルグスキー。苦労のない平和な人生だったとは言え、三十五才の若さで心臓発作で死んでしまった建築家であり美術家のハルトマン。彼らが十九世紀の暗い世相のロシアで精一杯感じたことを我々も感じることができるのです。 第五章 参考資料 一 人物プロフィール かっこ内は、出身国。 一. ウラディミール・アシュケナージ(ロシア) 2003年春より、N饗の指揮者を務める。 二. 富田勲(日本) 三. EL&P() 四. カルロ・バッラリーニ(木管五重奏) ビビエーナ五重奏団 − ジャンパオロ・プレット(フルート) − アレッサンドロ・カルボナーレ(クラリネット) − パオロ・グラツィア(オーボエ) − ロベルト・ジャッカリア(ファゴット) − ステーファノ・ピニャテッリ(ホルン) 五. (アンサンブル・リンデンバウム) 六. ピアニスターHIROSHI 七. 山下和仁(日本) 八. 長谷川陽子(日本) 九. ミカ・ヴァェユリュネン() 長谷川陽子と組んで、アコーディオン&チェロ版『展覧会の絵』を演奏した。 二 参考文献 一. ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ 嵐の時代をのりこえた「力強い仲間」 ひのまどか著 二. 追跡ムソルグスキー「展覧会の絵」 団伊玖磨・NHK取材班著 三. 「ムソルグスキー その作品と生涯」 アビゾワ著 四. ムソルグスキ−「展覧会の絵」全曲集 ドレミ楽譜出版社 五. 「ムソルグスキ−」 ロシア民衆の芸術的代弁者 六. 「ムソルグスキ− ロシアン フェスティバ−ル」 七. 「展覧会の絵」 森口陽著/美術出版社 八. 「展覧会の絵 少年少女(女声)合唱組曲」 全音楽譜出版社 九. 「展覧会の絵」 音楽之友社 十. 「赤い本」 Emilia Fried解説 モスクワ国立音楽出版社 十一. 「ムッソルグスキー」 服部竜太郎訳 十二. 「Mussorgskys Days and Works --- A Biography in Documents ---」 (ムソルグスキーの障害と芸術) Alexandra Orlova 著 十三. 「Mussorgsky In Memoriam 1881-1981」 (ムソルグスキーのメモリアム 1881−1981) Malcolm Hamrick Brown 編 十四. 「The Mussorgsky Reader. A Life of Modest Petrovich Mussorgsky in Letters and Documents」 (手紙と資料からみたムソルグスキーの人生) Jay Leyda and Sergei Bertensson編 十五. 「Mussorgsky」 Risemann 著 十六. 「Victor Hartmann and Modest Mussorgsky」 Alfred Frankenstein著 十七. 「Mussorgsky」 Hans Christoph Worbs 著 十八. 「History of Modern Russian Painting 1840-1940」 G.Loukomski 著 十九. 「Modest Mussorgsky Bilder einer Ausstellung」 (モデスト・ムソルグスキーの展覧会の絵) Lini Hubsch 著 三 音楽資料 ピアノ原曲 一. ウラディミール・アシュケナージ アシュケナージ編曲の展覧会の絵も収録されている。 録音:1982年6月 ポリドール株式会社 解説:榊 洋希 二. イエネ・ヤンドー(Jeno Jando) NAXOS モーリス・ラベル編曲(管弦楽) ラベル編曲のものは、いくつも発売されているので、聞き比べてみた。 一. エルネスト・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団 録音:1959年1月 二. ズービン・メータ指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック CBSソニー、 録音:1979年1月27日 Avery Fisber Hall。 解説:宇野 功芳 その他の編曲 その他の編曲スタイル、楽器編成を変えたもの、パロディなど色々聞き比べた。 一. ウラディミール・アシュケナージ(管弦楽) ウラディミール・アシュケナージ指揮・フィルハーモニー管弦楽団 ポリドール株式会社 二. 富田勲(シンセサイザー) RVC株式会社 三. EL&P(ロックバンド) 四. カルロ・バッラリーニ編曲(木管五重奏) ビビエーナ五重奏団 − ジャンパオロ・プレット(フルート) − アレッサンドロ・カルボナーレ(クラリネット) − パオロ・グラツィア(オーボエ) − ロベルト・ジャッカリア(ファゴット) − ステーファノ・ピニャテッリ(ホルン) 録音:1996.3.12、イタリア 五.(アンサンブル・リンデンバウム) 六.ピアニスターHIROSHI キングレコード 録音:1997年10月―11月、入間市民ホール 七.山下和仁編曲・演奏(ギター) 株式会社RMGファンハウス 録音:1981年3月10日―11日、入間市民ホール 八.長谷川陽子、ミカ・ヴァェユリュネン アコーディオン&チェロ版『展覧会の絵』 以下は、Tequilaさんのホームページより。 (c)2000-2001 Tequila -------------------------------------------------------------------------------- Piano/MUSSORGSKY,Modest 小川典子:BIS CD-905 ウラディーミル・アシュケナージ:ロンドン F35L-21011 イヴォ・ポゴレリチ:DG 437667-2 Piano/PLETNEV,Mihail ミハイル・プレトニョフ:Virsin Classics 0777 7596112 6 Orchestra/ASHKENAZY,Vladimir ウラディーミル・アシュケナージ指揮/フィルハーモニア管弦楽団:ロンドン F35L-21011 Orchestra/CAILLIET,Lucien ユージン・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団:Biddluph WHL046 Orchestra/FUNTEK,Leo リーフ・セゲルスタム指揮/フィンランド放送交響楽団:BIS CD-325 Orchestra/GORTCHAKOV,Sergei P. クルト・マズア指揮/ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団:Teldec 2292-44941-2 Piano and Orchestra/LEONARD,Lawrence Tamas Ungar(PIANO)/ジェフェリー・サイモン指揮/フィルハーモニア管弦楽団:CALA CACD1012 The Piano Concerto Paraphrase, Orchestration, and Cadenzas/Naoumoff,Emille エミール・ナウモフ/イーゴル・ブラシュコフ指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団:WERGO ALC51062 Orchestra/RAVEL,Maurice (ラヴェル版一覧へ) Orchestra/SARASTE,Jukka-Pekka ユッカ=ペッカ・サラステ指揮/トロント交響楽団:FINLANDIA WPCS-5642 Orchestra/STOKOWSKI,Leopold レオポルド・ストコフスキー指揮/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団:キング K30Y1546 マティアス・バメルト指揮/BBCフィルハーモニック管弦楽団:CHANDOS CHAN9445 Modern Ensemble/WILBRANDT,Thomas ト−マス・ウィルブラント指揮/モダン・シンフォニエッタ:DECCA 436 717-2 Wind Band/BOUTRY,Roger. ロジェ・ブトゥリー指揮/ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団:ジャパン・アーツ ATCO-3008 Wind Band/HINDSLEY,Mark H. フレデリック・フェネル指揮/東京佼成ウインドオーケストラ:佼成出版社 KOCD-3565 Wind Band/WRIGHT,Simon エリック・バンクス指揮/ロンドン・シンフォニック・ウインドオーケストラ:東芝EMI TOCE-7450 Wind Band/TAKAHASHI,Tohru ヤン・ヴァン=デル=ロースト指揮/レメンス音楽院シンフォニック・バンド:de haske DHR 11.006-3 Wind Quartetto/BALLARINI,Calro ビビエナ木管五重奏団:AGORA AG062 Rock Band/EMERSON,LAKE & PALMER エマーソン、レイク&パーマー:RHINO R2 72225 Period instruments Ensemble/Ensemble "ONGAKU-ZAMMAI" 音楽三昧:ALM ALCD-7016 Big Band/FERGUSON,Allyn ポール・ホーン(Sax)アイリーン・ファーガソン/ジャズバンド:DISCOVERY DSCD-960 Brass Quintet/ROBERTS,Stephen ファイン・アーツ・ブラスアンサンブル:Nimbas NI 5645 Brass Ensemble/ALLEN,Michael バーニング・リヴァー・ブラス:DORIAN xCD-90293 Brass Ensemble/HOWARTH,Elgar エルガー・ハワース指揮/フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル:ロンドン F26L-20384 Brass band/HOWARTH,Elgar ハワード・スネル指揮/ブリタニア・ビルディング・ソサイエティ・バンド:DOYEN DOY CD 011 Synthesizer/TOMITA,Isao 冨田勲:RCA VICTOR 60576-2-RG Clarinet Orchestra/YODO,Akira 武田忠善指揮/くにたちクラリネットオーケストラ:不明(自主制作)LMCD-1596 Saxopone Choir/SCHMIDT,William PITTEL,Harvey/Tex Sax:Mark Custom Recording Service 2280-MCD Flute Ensemble/AWANO,Tohru ピアチェーレ・フルート・アンサンブル:東京サウンドシティ企画 TSC CD-0029 Guiter/YAMASHITA,Kazuhito 山下和仁:BMG VICTOR BVCC9390 Trombone & Piano/LINDBREG,Christian クリスティアン・リンドベルイ:BIS CD-988 Organ,Saxophone,Flute & Guiter/Choral Concert コラール・コンサート:KLANG RAEUME 30430 Organ & Percussion/TANAKA,Noriyasu 松居直美:SONY RECORDS SRCR2181 Organ/KAUZINGER,Guenther ギュンター・カウツィンガー:Novalis 150152-2 Organ/WIEBUSCH,Carstern カールスターン・ヴィーブッシュ:FERMATE FER20029 Piano Trio/Bekova Sisters,The ベコーヴァ姉妹:CHANDOS CHAN9672 Brass Octet and three Percussion players/HIRAISHI,Hirokazu 国分誠指揮/東京佼成ウインドオーケストラ:東芝EMI TOCZ-9260 Percussion Ensemble/SUGAHARA,Atsushi 菅原淳指揮/パーカッション・ミュージアム:キング KICC-344 Duo Acodions/CRABB,James & DRAUGSVOL,Geir ジェイムス・クラッブ、ゲイァ・ドローグスフォル:EMI 7243 5 69705 2 6 Cello and Acodion/HASEGAWA,Yoko & VAYRYNEN,Mika 長谷川陽子、ミカ・ヴァェユリュネン:ビクター VICC-60260 |